「大切な人を救いたい」想いがなかなか届かない理由
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大切な友人の代わりにカウンセリングを受けたい
先日、私が仲良くさせてもらっている友人からメッセージが届きました。
友人の友人がピンチだそうで、その相談に乗って欲しい、とのこと。
実際に来た内容を(一部抜粋して)紹介します。
親しい友人が病んでるようなんです
友人の代わりに私がリョータさんにご相談することってできますか?
親しい友人がだいぶ病んでいるようで。本人は誰かに相談するつもりはないらしく。
(私には少し話してくれます)いつも彼女から話しかけてはくるのですが、相談に乗っていくうちに、なんというか【なぞかけ問答】みたいになってしまい
私が疲労困憊してしまって、相談に乗り続けるほどの気力も無くなってしまうので。最近は話をするたび四苦八苦しなければならず、私がどうにかなってしまいそうなので。
リョータさんにお力をお借りできたらと思うのですが。
こんな相談に乗ってもらえますでしょうか。(大阪府:Aさん)
親友を代わりに救うことは難しい
結論から言うと…
代わりに話を聞いて、当人を救ってあげる、ということはかなり難しい
ということになります。
「馬を川辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」
ということわざがあります。
いかに親友を救うのに適切なものがあることがわかっていても。
ご本人がそのメソッドを受ける(水を飲む)気持ちになれなければ、変わっていくこともないのです。
なぜ他者を救うのは難しいのか?
ご本人は
「つらい」「苦しい」「変わりたい」
と言いつつも、当の本人が適切なカウンセリングを受けることを嫌がる場合は結構多くあります。
それは、いくつかの理由(後述)があって、
変わらないことによるメリット
を受け取ってしまっている、という事実が存在しているから、なのです。
変わらないことによるメリット?
「メリットだって?本人は辛くて「変わりたい」と言ってるのに?」
と思われる方もおられるかも知れませんが、実は「変わらないメリット」があるからこそ、ご本人は変わっていけない、という事実もあるのです。
変わらないことによるメリットとはなんなのか?それは
「心配してもらって、気にかけてもらえる」
ということ、だったりするのです。
親友だからこそ「変わらないメリット」を与えてしまう
今まで、悩んだり落ち込んだりしていても、周囲が冷たかったり、そんな自分に
「考えが甘い」
「しっかり自立して」
との手厳しい声や空気感を与えられていた状況下で
ふとそんな自分に親友が気づいてくれた。
そして
「大丈夫?」「どうしたの?」「いつでも相談に乗るよ」
と言ってくれるようになると…。
そうやって気にかけてくれること自体が大きなメリットとなり、いつの間にか
- 謎掛け問答みたいになる
- いつの間にか(相談を受けてる側が)疲労困憊してしまう
- 自分まで気力が削がれるような気分になる
という状況になってしまうのです。
変わらないことによるメリットを受け取ってしまった人は
一方、
「大丈夫?」「どうしたの?」「いつでも相談に乗るよ」
と言われた側は、ついつい無意識に、変えようとしてくる人に対して、ゲームを仕掛けていくことになります。
それは本人が認識(理解)している訳ではなく、無意識に繰り返してしまうので、自分自身はもちろん、気にかけてくれた親友までも巻き込んで、どんどん深みにハマっていってしまうことにつながっていくのです。
その無意識下にある「ゲーム」とは、一体なんなのか?
今回は2つ説明しようと思っています。
無意識下にある「ゲーム」とは?
この「ゲーム」というのは、TA(交流分析)心理学で扱われている考え方です。
今回は2種類紹介しますが、他にもたくさんあるので、もし興味がある方はこの記事の最後にオススメする本などもオススメです。
無意識下にあるゲーム①:「はい、でも…」のゲーム(イエスバット)
「そんな風に考えないで、こういう風に考えてみたら?」
「そうね。そうだよね。。。でも。。。」
相談相手が良かれと思って発した応援メッセージを、最初は受け取って同意(Yes)してくれたものの、そのうち「でも(But)」と言って返されてしまう。
このやり取りが「イエスバットのゲーム」の特徴です。
親身になってアドバイスをした側は、一度同意してもらっているので「でも。。。」と返されることにムキになってしまうことも多く
「じゃあ、こう考えたら?」
「こういう風にもできるかも」
「一回とにかくやってみようよ」
と伝え続けるものの、結局相手は必ず最後に「でも」という言葉と共に、できない理由を並べる。
そして、一度も実行されることがないまま(もしくは1回だけ付き合いでやったようなカタチになって)終わってしまう。
このゲームにハマってしまうと、お互いが疲弊していってしまいます。
無意識下にあるゲーム②:義足のゲーム
「それはあなただからできるのよ。。。あなたは恵まれてるけど、私はこういう状況だし、こんな性格だし、お金もないし、若くもないし、健康でもないし、時間もないし、才能もないし、運もないし、失敗するかも知れないし、うまくいかないだろうし…」と、
いかに自分には(実行できない)ハンデがあるか、を、無意識に盾のように使ってしまうのが
義足のゲームの特徴です。
こう言い出してしまった相手をさらに追い詰めてしまうと(例えば「もっと重いハンデを持った人だって頑張ってるじゃん」など)、言われた側は口を閉ざしてしまい、気まずい雰囲気になって終わってしまう、というのが義足のゲームの結末です。
ゲームにハマるな
これらのゲームにハマってしまうと、話がどんどんこじれて行ってしまいます。
でも「構ってくれてる嬉しさ」「親身になって考えてくれる有り難さ」から、相談者はあなたにまたアプローチをしてくる。
そして親身になって話し相手になるものの…。
結果はいつも徒労に終わってしまう。。。ということになってしまいがち。
このゲーム。
決して特殊なものではなく、日々の会話やお酒の席などでも多く見られます。
会話がゲームのパターンになっているな、と思ったら、アドバイス的なことをすぐにやめて、別の話題に変えることも、ある意味大切だと考えています。
ゲームに気づいたときの注意点
会話中にゲームに気づいたとしても。
決してご本人を責めたり、「あなたがやってるのはゲームなのよ」などと解説を加えたりはしないであげてください。
感情に任せて指摘などしてしまったら、言われた側は
「ひどい!私だって変わろうと思ってるのに!」
と憤慨して、関係が悪化してしまう場合もあります。
(なので、このページにたどり着かれた方も、誰かにこのページのURLを送ったりなどはしないでくださいね)
経験が少ないカウンセラーもハマってしまう
このゲーム。
経験が少ないカウンセラーもハマってしまいがち。
カウンセラー自身が相手にのめり込んでしまい、ついつい強い口調で「だから1回やってみようよ!」などと言ってしまった結果、関係が悪化してしまう、ということはよくあることです。
かくいう私も昔、このゲームにハマってしまったことがあります。
さまざまな経験を積んだ今は、ゲームに乗ることはなくなりましたが、でもあのときのことを思うと、ちょっと心がツン、となります。
今、その人はどうなってるかと思うと少し心配ではありますが、そこに入り込みすぎてしまうと、またゲームが再燃するだけです。
なので、ご相談頂いたAさんにも、敢えて心を鬼にして、以下のメッセージを送ります。
親友を救うためにできること
今の状況では、親友を救うためにできることは
「親身になって相談に乗る」ことではなくなっています。
ゲームが仕掛けられた瞬間に
「あとはあなたが決めることやからね~」
「あくまで私の意見やから。できんでもしゃぁないわ」
「もしどうしても、というなら、知り合いのカウンセラーいつでも紹介するから言うてね」
と、問題の解決策には触れず(言っても自分の持ち札がなくなっていくだけなので)、ただひたすら相手が立ち直ることを信じて待っている姿勢を貫いてください。
信じ・伝え・待つ
このゲームを熟知しているカウンセラーは、ご相談者(クライアント)に対して
ただひたすら信じ
ただひたすら信じてると伝え
ただひたすら自分の足で立ち上がるのを待つ
という姿勢を貫きます。
もちろん、ご相談内容に合わせた適切なワークはどんどん行っていきますが、だからといって、カウンセラーが相手に入り込みすぎて立ち上がることを助けようとしたりはしません。
ただ信じる。
ただ伝える。
ただ待つ。
この姿勢を貫くのは容易なことではありません。
(手を出した方がよっぽど早い、と思ってしまうことだって多々あります)
が。
自分で立ち上がってもらうように待つのも、私達カウンセラーの仕事だと思っています。
まとめ:本人の意志しか世界を変えられない
カウンセラーのお仕事をしていて、多くの方の変化を見てきました。
どんどん変化していく方がおられる一方で、
どうしても(無意識の)ゲームを仕掛けて来られる方もおられます。
(やはりゲームを仕掛けてくる方は、どうしても問題解決に時間がかかってしまいます)
でも。
私はただ信じて待つことにしています。
自分で自分のやっていることに気づいて、このままでは変われないことを認識し、変わりたいと強く願って、そのために適切なワークを行っていく。
その姿勢になるまで、私は信じ続けていきます。
自分を変えるためには、御本人の強い意志が不可欠なのです。
だから。ゲームには乗らずに、ご自身で立ち上がるまで待ちます。
私自身が多くの心の師(メンター)に見守られながら、ゆっくり立ち上がったように。
みんないつか必ず立ち上がれる、と信じているからです。
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