やさしいコントロール
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■毒親や引きこもり系の記事を書くと
「私の親はそんなんじゃなかった」
「ちゃんと育ててくれた」
「悪いことをしたときは叩かれたけど、それは自分が悪いから」
「とても優しくていい親だった」
という方が少なからずおられます。
■でも生きにくい。とてもつらい。
自分の人生を生きてるという実感もない。
こんな風に感じるのは「自分が悪い」から。
だから、そんな悪い自分を治すために
カウンセリングを受けに来ました、
という方が一定数おられるのです。
親の愛を信じ、親をかばう子
■こういう方には、似通った特徴があります。
- 子どもの頃の記憶がほとんどない(特に幼少期〜小学校卒業ぐらいまで)
- (親は)私が子どもの頃は怖かったこともちょっとはあったけど、今はとても優しい
- いじめられたり困ったことが起こった経験がある
- いじめられたり困ったことがあったとき、親には相談していない
- 親に叩かれたことは「私が悪いことをしたとき」「そんなにない。ちょっとだけ」「本当に軽く」「虐待とは言えないレベル」だった
- 親に叩かれた今までの回数は「覚えていない」「(相談内容には関係ないから)言いたくない」
- 悪いことをしたときとは?と聴くと「私がワガママを言ったとき」
- ワガママとは?「自分の希望を言ったとき」「親と違うことを思ったりしたとき」
こういう話になることが多いのです。
【注】カウンセラーは検察官ではないので(笑)相手が言いたがらないことをしつこく聴いたり、無理に言わせようとはしません。
自然な会話の中で、少しずつ聴こえてくる言葉たちを集めてまとめると、上記のようになっていくことが多いのです。
■こういう方のカウンセリングをすると
「悪いのは私。親はとっても優しかった」
「ちゃんと育ててもらったし、不満に思うのは私が悪いから」
と言われます。
■確かに、親子がご一緒にカウンセリングを
受けられたときは、友だちのように仲の良い
感じでお話される姿を目にすることもあります。
■ただ、実際のところ、
親御さんもお子さんも気づいていないレベルで
「直接的ではないコントロール」が
ずっと効いている可能性があるのです。
優しいコントロールの正体
■結論から言います。
■優しいコントロールというのは
- 罪悪感コントロール
- 不安感コントロール
の2種類です。
■普段、虐待や引きこもり問題などで
よく取りざたされるのは
「強権的な親が強烈にコントロールを掛けてくる状況」
を紹介することが多いです。
■この、強権的で強烈なコントロールを
- 恐怖感コントロール
と呼んでいて、
相手(この場合は子ども)に恐怖感を感じさせ
「言うことを聞かないと恐ろしいことになる」
と思わせてコントロールしていく方法が
目立ちがちです。
■ですが、恐怖感とは別の方法で
相手に「申し訳ない」「自分が悪い」と
感じさせるように持っていくことを
- 罪悪感コントロール
と呼び、
■常に相手に「できなかったらどうしよう」
「失敗したら怖いな」と感じさせることを
- 不安感コントロール
と呼んでいます。
■「親は優しかった」と言われ、
「でも生きづらい」と訴えられる方の
多くが、この
- 罪悪感コントロール
- 不安感コントロール
にとても弱い状態でおられることが
少なくないのです。
罪悪感と不安感でコントロールする方法
■実は、恐怖感コントロール以上に
- 罪悪感コントロール
- 不安感コントロール
に苦しむお子さんは多いのが現状です。
■実際にどんなことが起こっていたかというと
- 子どもが望んでも、親が望まないことは「う〜ん。それよりもこっちの方がいいんじゃない?」などと遠回しに反対する
- 親が望まないことは「悲しそうな顔」「困った顔」「聴こえなかったフリ」等をする
- 望まないことは「そうね。。。でもお父さん(お母さん)がなんて言うかしら」「お母さん(お父さん)に怒られちゃうかも」
- 笑っていると「良い子ね」「優しい子ね」「助かるわ」
- 不機嫌な顔をすると「そんな顔しないで」「悲しませないで」
- よくよく考えてみたら、子が自分の人生を選択したことがなかった
- いつでも親に聞かないと自分がどうしたらいいかわからなかった
- 「やってみよう」と言われる前に必ず「でも」「大丈夫なの?」「心配だわ」と言われた
- 「大丈夫だって」と言っても「でももし」「例外だってあるかも」と言われた
- それでも「大丈夫」と言ったら「保証できるの?」「確実に?絶対に?」「どうしてそう言えるの?」と(あきらめるまで)何度も聞く
- あまり強く反抗すると「そうよね。全部お母さん(お父さん)が悪いんだよね」と落ち込んだり泣いたりする
- 「あなたは子どもだからまだわからないと思うけど」と前置きされることが多く、結局は反対意見
- 親と意見が一致したら、すぐに「そうね!それがいいわ!そうしましょ」
- 結局親に反抗するのが面倒になり、全ての判断を親に任せてしまう場合も
などが家庭の中で日々繰り返されている、ということが多いです。
■こういう方法で育ってしまうと、
「自分で判断しようとすると何となく罪悪感を感じてしまう」
「自分の意見を持つこと自体に抵抗感も持ち、自分責めしてしまう」
「失敗を極端に怖れ、自分がやったことがあること以外できない子になる」
「何か挫折や小さな失敗経験があると、それだけでバーンアウト(燃え尽き)になる」
ということになりがち。
不安感&罪悪感コントロールを受けた子はどうなる?
■このような悪気のない、優しいコントロールを
受け続けてしまうと、
■大人になった(またはなろうとしている)人が
- 自分自身に激しい罪悪感を感じる
- 自分自身が強い不安感を持つ
状況から
「自分のせいなんだ」
「自分がきっと(メンタル的に)おかしいんだ」
と思い込んで、カウンセリングを受けに来られる、
という流れがあります。
■でもそれは私からすると
- 幼少期から、そこはかとない「罪悪感」を感じる環境で
- 何か問題があれば「ごめんなさい」と謝らされ
- 新しいことをやろうとすると「怖い」「大丈夫なの?」「やめといた方が」と言われ
- チャレンジしなければ安心してくれる存在がいて
- その結果、何かをすることに罪悪感や不安感を感じるようになり
- 失敗が極度に怖いと感じるようになってしまった
ということだったんだろうな、と見ているのです。
なぜ人はやさしいコントロールから抜け出せないのか
■やさしい、とは言うものの
心に対するダメージは、結構大きく、
恐怖感コントロールと同じかそれ以上の
効果があるのが、
- 罪悪感コントロール
- 不安感コントロール
の実態です。
■恐怖感コントロールの場合、恐怖感を
与えた相手に対して『嫌悪感』を感じやすく
また、その嫌悪感に対しても正当化しやすい
事情があるため、わかりやすいのです。
■逆に、罪悪感コントロールや
不安感コントロールの場合は
- 相手を嫌な気分にさせたのは私(ワガママだから・ダメな子だから・自分勝手で卑怯な子だから)
- 自分が不安な気持ちになったのは私(弱いから・根性が足りないから・甘えてるから・情けないから)
- 心配してくれてるのは私を愛してくれてるから。なのに反抗心を持つのは私がいけない子だから
というふうに、
『責めが自分に向く』
という形で効き続けてしまうのです。
■罪悪感コントロールと不安感コントロールは
抜け出すのに時間がかかります。
ですがそれは、不可能を意味している訳ではなく
いつか抜け出せるのも事実なのです。
親はわかってやっているのか
■この罪悪感コントロールと不安感コントロール。
やってる側は何も意識していません。
わかってやっている訳ではないのですが、ただ
■自分(親)の考えから離れてほしくない
という思いだけは、しっかりお持ちのようです。
■なので、カウンセリングを受けられて
「このようなことがなかったか」
「結果コントロールになってなかったか」
とお話しても、最初は意味が理解できず
『鳩が豆鉄砲を食ったような』表情を
される方もおられます。
■掛けた側も掛けられた側も
全く気付かない間に進行し、
結果、お子さんが自信を失ってしまう
ということがあることを、
カウンセリングに来て初めて気付かれるのです。
優しいコントロールからの抜け出し方
■罪悪感コントロールや不安感コントロールから
抜け出していくために必要なのは、なによりも
■第三者から
「それ、罪悪感背負わされてない?」
「不安の解消は、いきなり大きなことじゃなくて、
系統的に少しずつ焦らずに行こうね」
と言ってもらえることが大切です。
■ついつい
「自分の親は悪くないんです」
「悪いのは自分なんです」という
気持ちばかりが先行してしまって
罪悪感や不安感の処理の仕方が
遠のいてしまっては元も子もありません。
■自分が罪悪感や不安感を感じてしまい
その処理が上手くできないな、と思ったら
まずはカウンセリングをお受けいただく
ことが大切だと思っています。
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